Storage Magazine 2020年11月号より
Scott Sinclair
vSphere 7でVMwareはNVMe-oFを本格サポート
VMwareによるNVMe-oFのサポートは、企業がデータセンターのハードウェアを変更することなく、アプリケーション環境のパフォーマンスを大幅に改善できる可能性が生まれたことを意味する。
VMwareは、vSphereバージョン7のリリースにおいてNVMe-oFを使った共有ストレージのサポートを追加した。NVMe over Fabricsは劇的にデータストレージ環境を高速化させるため、これはIT基盤設計にとって重要な節目となる。ITリーダー達は、もしまだであれば、このサポートが自社の環境にとって何を意味し、NVMe-oF導入のために何を用意するのかを理解する必要がある。
読者の皆さんは、NVMe技術についてはもうよく知っていることだろう。忘れている人のために簡単におさらいすると、NVMeとは、フラッシュストレージやSSDなどPCIeで接続された不揮発性ストレージにアクセスするために設計された、オープンの論理デバイス・インターフェースである。このインターフェース規格は、低速の回転式ハードディスクではなく、それよりはるかに高速なフラッシュストレージのために設計されたので、NVMeのプロトコルが大幅にI/Oレイテンシを低減し、パフォーマンスを増大させ、フラッシュの長所を最大限に引き出してくれる。
NVMe-oF技術は、NVMeの低レイテンシパフォーマンスをストレージネットワーク全体に拡張したものだ。VMwareが新たにサポートを発表したのは、NVMe over Fibre Channel (FC-NVMe)およびNVMe over RDMA (厳密にはRDMA over Converged Ethernet)で、両方ともNVMe-oF規格のプロトコルだ。このことは、貴社のデータセンターがFCかEthernetのどちらかで標準化されていても、今回VMwareが貴社の環境にあったNVMe-oFオプションを提供したことを意味する。
VMwareがサポートを追加した意味とは?
VMwareの発表によって、NVMe技術の優れたパフォーマンスを利用するアプリケーション環境の数は大幅に増える。
パフォーマンスを上げたいという思いが、NVMe型SSDをサーバーの内蔵ドライブとして導入する動きを促進してきた。ここ数年の間に、複数の外部ストレージシステム・ベンダーが、自社アレイに対するNVMe SSDs およびNVMe-oFサポートを追加するようになった。複数のストレージネットワーク・ベンダーも同様だ。
個々のベンダーによるサポートの追加はそれなりのメリットがある。しかし、最大限のメリットを引き出すには、データパス全体に対するNVMeプロトコルのサポートが不可欠だ。最大限のパフォーマンス・メリットを提供するには、ストレージメディア、ストレージシステム、ネットワーク、ネットワークアダプター、OS、マルチパス、これら全てがNVMeとMVMe-oFをサポートしていなければならない。
VMwareの発表以前に、SUSEやRed Hatなど複数のLinuxディストリビューションがNVMe-oFをサポートしていたものの、大半のアプリケーション環境においては、マルチパスとそれをサポートするOSが欠落していた。しかし、NVMe-oFをサポートするベンダー群にVMwareが加わることによって、NVMeレベルのパフォーマンスに対する認識は一段と高まるはずだ。
実際のところ、NVMeはもはやパフォーマンス重視のハイパフォーマンス・コンピューティングのワークロードのためだけのものではなくなっている。今では、大半のエンタープライズ・アプリケーションが、NVMeの低いレイテンシのメリットを享受できる。
NVMeのパフォーマンスが必要でない場合は?
ここ数年の間に企業が自社のアプリケーションを、回転式ハードディスク・ベースの基盤からフラッシュへと移行したので、パフォーマンスのメリットは明確かつ強力だ。しかし、それはこの話題の中のごく一部に過ぎない。往々にして見過ごされているのは、フラッシュストレージによってもたらされる、コスト削減の部分だ。
Enterprise Strategy Group (ESG)の調査によると、IT部門の47%がフラッシュストレージ導入のメリットとして、総所有コスト(TCO)の改善をトップに挙げている。平均すると、節約されたTCOの割合は31%になる。
フラッシュの優れたパフォーマンスは、同程度のパフォーマンスを達成するのに要求されるシステムの数を減らすことで、基盤設計を簡素化してくれる。これは、アーキテクチャーの計画を簡素化するだけでなく、基盤のラックの棚を開けてくれるので、予想外のアプリケーション要求や新規のアプリケーション・デプロイメントにも対応できるようになる。さらに、パフォーマンスが良くなれば、突発的なパフォーマンス問題を診断するITリソースの負荷軽減にもつながっていく。
もちろん、NVMe-oFの導入はハードディスクからフラッシュに移行した時のような、目覚ましいレベルのパフォーマンス増大は提供しないかも知れない。とはいえ、ESGの調査では、IT部門の55%がNVMe技術により自社のアプリケーションが高速化するだろうと期待し、56%が数年後にやって来るアプリケーション要求にも耐えうる環境作りをNVMeが助けてくれることを期待している。
ITリーダーたちはまた、NVMeが自社のIT環境の簡素化を促進することにも期待を持っている。回答者のほぼ半数がNVMeを使ったSANが、既存のSAN基盤を統合する能力を持っていると見ており、48%が環境のパフォーマンス・チューニングに関連する運用コスト低減の能力に注目している。
一般に、NVMeはデータセンター環境を高速化するだけでなく、管理、計画立案、最適化の業務負荷を軽減しながら、環境を劇的に簡素化する能力を備えている。
ファイバチャネルかイーサネットか
vSphere 7において、VMwareはNVMe-oFのオプションとしてファイバチャネル、イーサネット両方のサポートを提供している。FCに関しては、ブロードコムが既存製品にFC-NVMeのサポートを追加し、同一環境においてFC-NVMe、ファイバチャネル両方のサポートを提供している。FC-NVMeはすでに、ブロードコムのGen 6ハードウェアにおいてサポートされている。
つまり、貴社の既存の基盤がすでにNVMeをサポートしており、コストとNVMeパフォーマンス活用の複雑さを減らせる可能性があるのだ。
貴社の標準がイーサネットであれば、CPUの負荷を減らしつつNVMeの低レイテンシのメリットを最大限に享受するために、スマートあるいはインテリジェント・ネットワークインターフェース・コントローラーへの投資を検討してみよう。イーサネット・ネットワークのベンダー数社は、パフォーマンスを高速化する機能を追加して、ネットワーク設定の簡素化を支援している。例えば、Mellanoxはストレージネットワーク環境を高速化するために、 Ethernet Storage Fabric(ESF)を設計した。
技術によって提供するパフォーマンスのレベルやレイテンシは異なる。そのため、ある技術を導入する前に、それを貴社特有の環境下で検証しなければならない。
重要な点は、NVMe-oFをサポートするためにストレージベンダーやネットワークベンダーが行ってきた全ての作業によって、貴社のデータセンター基盤の全部または一部がそれを利用できる可能性ができたという事だ。その結果、VMwareのvSphere 7におけるNVMe-oFサポートのお陰で、ソフトウェアをアップデートするだけで、貴社の既存アプリケーション環境のパフォーマンスが大幅に改善されるかも知れないのだ。
NVMeはもうエクストリームユーザーだけのものではない。VMwareがNVMeとNVMe-oFをサポートするようになったことで、今やこの技術がエンタープライズ環境にとってごく当たり前のものと考えられるようになった。
Scott Sinclairは、Tech Targetの一部門ESGのプラクティス・ディレクター。
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