Storage Magazine 2022年2月号より
Paul Crocetti
2021年ベスト・エンタープライズ・ストレージ製品
最終選考に残った39製品が、『ストレージ・マガジンとSearchStorageのプロダクト・オブ・ザ・イヤー』トップの座を争った。どこが金賞、銀賞、銅賞をとったか、とくとご覧あれ。
ストレージ業界は、非常に重大な時期にある。企業はパンデミックによってもたらされた、ワーク・フロム・エニウェア(どこでも勤務)の状況や指数関数的に増大するデータ量、さらには増加傾向にあるランサムウェアなどのセキュリティの脅威に対応中だ。貴社にとって必要不可欠なデータを保存、管理、保護する製品についてインフォームド・チョイス(情報に基づく選択)を行うことは、かつて無いほど重要になっている。今回20周年を迎える『ストレージ・マガジン&SearchStorageのプロダクト・オブ・ザ・イヤー』は、ここにエンタープライズ・ストレージシステムにおける最良の製品を表彰する。いつものように、選考対象の中にはストレージ業界だけでなく、テクノロジーの世界全般に名をはせる企業が入っている。スタートアップ、新規参入企業も数社加わっている。我々は昨秋、選考対象となる製品を提出するようベンダーに案内を出した。応募条件は、ベンダーが2020年9月22日~2021年9月21日までの間にリリースまたはメジャー・バージョンアップした製品である。次に、コンサルタント、アナリスト、ユーザー、ストレージ・マガジンおよびSearchStorageの編集者ら業界のエキスパートから構成される我が審査委員会は、5つの部門においてメダルを競う39の最終選考候補を選んだ。ストレージ ・プロダクト・オブ・ザ・イヤーの5つの部門は以下の通り。
バックアップおよびDRのハードウェア、ソフトウェア、サービス
クラウドストレージ
ディスクおよびディスク・サブシステム
HCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャー
ストレージシステムおよびストレージ・アプリケーション・ソフトウェア
審査員は、受賞製品を決めるためにいくつかの要素に基づいて最終選考候補を採点した。パフォーマンス、使いやすさと管理のしやすさ、機能と価値などである。その結果、ランサムウェアからの保護、コンテナストレージ、非構造型データの増大、クラウド・ファイルストレージ、フラッシュストレージなど、現在のトレンドに取り組んでいる錚々たる製品が揃った。『2021年ストレージ・マガジン&SearchStorageプロダクト・オブ・ザ・イヤー』金賞、銀賞、銅賞、全ての受賞ベンダーの製品をじっくり見てもらいたい。いくつかのベンダーは過去受賞した経験を持っている。初めてメダルを獲得するベンダーも、十分にその価値があるところばかりだ。そしてある部門では、非常に珍しい2年連続金賞受賞者が出た。ここにプロダクト・オブ・ザ・イヤーを受賞した全てのベンダーを讃える。
バックアップおよびDRのハードウェア、ソフトウェア、サービス
ランサムウェアの脅威はなかなか無くならない。実際、この2年の間に多くの従業員が、リモートワークでセキュリティの低いネットワークへとシフトしたために、ランサムウェアの脅威は勢いを増したように見える。バックアップ製品が、ランサムウェアからデータを保護する機能を持つことは必須であり、受賞製品はこのトレンドを反映している。クラウドとコンテナの二つの分野も、この部門において目立った特徴である。Druva Inc.は、同社のCloud Platformで初めて金賞を受賞した。現在この製品は、Druva Data Resiliency Cloudと呼ばれている。このクラウドデータ保護ベンダーは以前、バックアップソフトで2011年に銀賞、2015年に銅賞を受賞している。審査員は、Cloud Platformのシンプルさとランサムウェアからデータを守るセキュリティ機能を評価した。主な機能としては、異常検知、オーケストレイテッド・クラウドDR、エッジアプリケーション・サポートなどがある。
プロダクト・オブ・ザ・イヤー表彰台の常連Veeam Softwareは、今年2つのメダルを獲得した。自社のBackup & Replication v11で銀賞、Kasten by Veeam(訳注:Kasten社は2020年Veeamに買収された)のK10 v4.5で銅賞受賞である。Veeamは、最近では2017年、遥か以前2010年にもメダルを獲得している。受賞したBackup & Replicationでアップデートされたのは、待望の継続的データ保護機能だ。その他の機能としては、不変性ストレージ(訳注:バックアップデータの保存先として上書きや削除ができないストレージ)を使ったランサムウェア対策、統合ネイティブバックアップ&レプリケーション・クラウドサービスなどがある。2020年Veeamに買収され、プロダクト・オブ・ザ・イヤーのこの部門で金賞を受賞したKastenは、Kubernetesデータ保護市場黎明期のリーダーだった。今回銅賞を受賞したK10のバージョンアップには、不変性機能が追加された。Kastenは、ランサムウェアからのデータ保護をKubernetesネイティブで最初に提供したベンダーは自社である、と主張している。詳細については、SearchDataBackupの記事、2021年度バックアップおよびDRのハードウェア、ソフトウェア、サービス受賞製品を参照。
クラウドストレージ
クラウドストレージの使用は、パンデミック期間中、飛躍的に増大した。その結果、クラウドベースのエンタープライズ・ストレージシステム購入の判断は、以前にも増して重要になってきた。我々のクラウドストレージ部門の受賞製品(二つの初受賞製品が今回のトレンドを端的に表している)には、二つのクラウド・ファイルストレージ製品と、コンテナに注力したストレージ製品が含まれている。MinIO Inc.は、初めて表彰台に登場し金賞を獲得した。このベンダーは、Kubernetesネイティブ・オブジェクトストレージ、およびパブリッククラウド、プライベートクラウド、エッジ間で稼働するコンテナ用永続ストレージ、という複数のストレージ・トレンドを製品に活かした。審査員は、この製品のスピード、技術、柔軟性を高く評価した。このベンダーにとって、今回が初めてのプロダクト・オブ・ザ・イヤー受賞だったが、今後も受賞が期待される。
Nasuni Corp.は、過去表彰台に上ったことがあるが、あれからだいぶ経っている。このベンダーは、2010年にストレージ管理ツール部門で金賞を取ったが、今年はCloud File Storage 9.3で銀賞を受賞した。主な機能としては、ランサムウェアからのデータを守るための不変クラウドストレージ、高速ファイル同期、シンプルになった非構造型ファイルデータ管理などがある。Ctera Networks Ltd.も、もう一社のプロダクト・オブ・ザ・イヤー初受賞者だ。今回、Cteraグローバル・ファイルシステムのバージョン7.0で銅賞を受賞した。審査員は、この製品のパフォーマンスと移行ツールを評価した。製品の主な要素は、新規のセキュリティ・フレームワーク、日々リモートサイトに30TBのスループットを提供するプロトコル、などだ。非常に多くの従業員がリモートで働いている今日(こんにち)、後者の機能拡張は重要である。詳細については、SearchStorageの記事、2021年度クラウドストレージ部門受賞製品を参照。
ディスクおよびディスク・サブシステム
ディスクおよびディスク・サブシステム部門の受賞製品には、様々なベンダーが出揃った。その内の1社は、業界のビッグネームの一つだ。他の2社は、この部門に参入したのは最近だが、3社ともかつてプロダクト・オブ・ザ・イヤーの表彰台に登ったことがある。フラッシュとAIが、今回の受賞製品の際立ったトレンドになっている。今はDataDirect Networks (DDN)傘下となった、Tintri Inc.が初めてこの部門で金賞を受賞した。同社は、2015年にオールフラッシュ・ストレージ部門で銀賞を獲っている。DDNは、買収したストレージ製品NexentaStorおよびIntelliFlashとTintri VMstore T7000 Seriesを統合することによって、製品の利点をうまく引き出している。審査員は、このNVMeベースの製品の使いやすさ、機能、革新性を評価した。一例として、Tintriはストレージタスクと機能の管理を、AIを使い自律運用で実現している。
2017年と2020年に銅賞を獲得したInfinidatは、今回InfiniBox SSAオールフラッシュモデルで、一つ上の銀賞を受賞した。審査員は、改善されたパフォーマンス、スピード、求めやすい価格を評価した。InfinidatのNeural Cacheアルゴリズムは、この製品の大きな特長になっている。このスマートストレージ・ソフトウェアは、ユーザーが要求する可能性のあるデータセットを予測するのに使われている。さらに、この製品は二次フラッシュキャッシュを必要としない。昨年銅賞を獲得したDell EMCは、今回PowerStoreOS 2.0を搭載したエントリーモデル、PowerStore 500で銅メダルの表彰台に帰ってきた。主な機能としては、AIチューニング、インテリジェント・ティアリング、アプライアンス・クラスタリングなどがある。審査員は、この製品のパフォーマンス、ストレージ管理のシンプルさ、自動アップグレード機能を評価した。詳細については、SearchStorageの記事、2021年度ディスクおよびディスク・サブシステム受賞製品を参照。
HCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャー
HCI製品は、数多くの機能を提供している(提供していると主張しているだけのものもある)。そのため、製品を買う側がエンタープライズ・ストレージ製品の中のどれが、謳っている通りの機能を提供しているのかを知るのは非常に重要である。HCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャー部門は、新設のカテゴリーの一つだが、しばしば業界で最も有名な企業が何社かエントリーしてくる。今年は、ストレージの世界で最も有名な2社と、スタートアップが表彰台に登った。Dell EMC VxRail Pシリーズは、審査員満場一致で金賞に選ばれた。この部門が出来てから3年の間に、Dell EMCは今回で2度目の金賞受賞だ。(訳注:2020年から連続での金賞受賞。)今回、審査員が評価したのはVxRailの統合性とハードウェア、ソフトウェアのバージョンアップだ。主な特徴として、改善された管理機能、強化されたセキュリティ機能などがある。VxRailはHCIのカテゴリーというジャンルを明確にする製品であり、これほどパフォーマンスが良いのも納得できる、とある審査員が語った。
HPEはHCI部門での初めての受賞を銀で飾った。もっとも、HPE Nimble Storageは2018年、ストレージアレイ部門で金賞を受賞している。また、HPEに買収される以前、Nimble Storageはプロダクト・オブ・ザ・イヤーのメダルを3つ獲得している。HPE Nimble Storage dHCIは、NVMe設定のサポート、ネットワーク機能の拡張を追加している。審査員は、この製品の低レイテンシ、高可用性、ネットワーク自動化を高く評価した。Lightbits Labs Ltd.は、LightOS 2.1で今回初めてプロダクト・オブ・ザ・イヤー受賞者の仲間に入った。スタートアップの同社は、NVMe/TCPネットワーク、ポイント・イン・タイム・スナップショット、マルチテナンシーに卓越した技術を持っている。特筆すべきは、ユーザーがこのスナップショット機能をコンテナに使えるという点だ。審査員は、このベンダーの技術力に感銘を受けた。今後、このイノベーション力のある企業が何を出してくるか楽しみだ。詳細については、SearchStorageの記事、2021年度 HCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャー受賞製品を参照。
ストレージシステムおよびストレージ・アプリケーション・ソフトウェア
コンテナ・オーケストレーターのKubernetesは、エンタープライズ・ストレージシステムにとって、相変わらず重要なプラットフォームだ。データ量の増加は、もう一つのトレンドで、ストレージシステムはこのデータを全て管理しなければならないのだ。ユーザーはストレージシステムに多くの機能を要求しているが、今回のストレージシステムおよびストレージ・アプリケーション・ソフトウェア部門の受賞製品はこれを様々な方法で実現している。この部門では、これら最新のトレンドとその先を見据えた広範な種類のストレージサービスが提供されている。ストレージ市場に参入して比較的日が浅いにもかかわらず、Portworxはこれまでに強烈な印象を与えてきた。現在、Pure Storage Inc.傘下のこのベンダーは、過去3回プロダクト・オブ・ザ・イヤーのメダルを獲得しており、今回そこに金メダルが加わることになった。Portworx Enterprise 2.8は、ユーザーによる大規模なKubernetesアプリケーション稼働を支援する。これは、コンテナがこれまでにも増して普及して来た現在、重要な機能だ。主な機能としては、Pure Storage製品との統合、その結果としてのストレージ・プロビジョニング、予測分析などがある。
Pavilion Data Systems Inc.は、HyperParallel Data Platformでプロダクト・オブ・ザ・イヤーの初受賞となる銀メダルを獲得した。同社のフラッシュアレイが提供する高いパフォーマンス、データ・プロビジョニング、ネイティブ・ファイルシステム、コンテナサポートは、審査員の高い評価を得た。審査員は、このプラットフォームの革新性とブロック、ファイル、オブジェクト・ストレージを同時に扱える機能にも好印象を持った。Kompriseは2年続けて、この部門で銅メダルを取った。優れたデータ管理は「金メダルの重みがある」と、ある審査員は語った。Komprise Intelligent Data Managementは、まさにそれを提供している。バージョン4.0には、異なるストレージメディア間で、データを分析、移行、レプリケートする機能、さらにはグローバルサーチと分析の機能が付いている。詳細については、SearchStorageの記事、2021年度ストレージシステムおよびストレージ・アプリケーション・ソフトウェア受賞製品を参照。
著者略歴:Paul Crocettiは、TechTarget IT基盤および戦略グループのシニア・サイト・エディター。
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