Storage Magazine 2022年2月号より
Scott Sinclair
コンテナ化環境の複雑さを低減しよう
ンテナ化環境は、ITの運用を加速してくれるはずだった。しかし、長所が多くなるにつれて複雑さが増し、今や企業が解決すべき課題となっている。
企業のIT部門に新たな目標が与えられた。さらに迅速に動け、だ。単に可用性を確保し、信頼できる技術を提供するだけでは、もはや十分ではない。運用を加速する事が、またたく間にITの優先課題リストのトップに上がってきた。
Enterprise Strategy Group (ESG)の最新の調査によると、ITの意思決定者の67%が、開発者と業務部門をサポートするIT基盤の供給と配備を加速せよ、というプレッシャーを受けていると回答した。IT運用と収益創出には直接的な因果関係があるという認識が、運用加速の要求を勢いづけている。
技術と基盤リソースへのより高速なアクセスの実現を追求する企業にとって、パブリッククラウド・サービスは画期的な結果をもたらしてきた。だが、これによって競争的差別化を行う機会は徐々に減ってきたように見える。我々は、デジタル・イニシアティブが競争優位性を創る時代にいるが、あらゆるところにクラウドが普及したため、パブリッククラウドを使っているだけでは、競争において頭一つ抜けるのにもはや十分ではないのだ。
クラウド使用のメリットが減少しているだけでなく、クラウド使用により、IT環境が分散されるにつれて、企業のコストは増大してきた。企業が業務を拡大するにつれて、自社のアプリケーションの刷新と開発の加速、本番アプリケーションへのコンテナ導入と利用(ステートレス、ステートフル*訳注1に関わらず)が増大した。
訳注1:以前のセッション状態を保持するかしないかの処理方法の違いを表す言葉。保持しない=ステートレス、保持する=ステートフル。
コンテナの導入は、ソフトウェア開発の速度と質に多くのメリットをもたらした。しかし、コンテナ環境が複数のプライベートクラウド・プロバイダーとデータセンター拠点間に広がるにつれて複雑さが増大し、当初コンテナ導入の動きを促進していた、スピードアップのメリットを阻害するようになってきた。
増大する複雑さの背後にあるものは?
ITは簡単な仕事ではない。これまでも常にそうだった。運用の加速と規模の拡大を、少数の人員追加、さらには追加なしで実現せよ、という課題においては複雑さの問題が出て来た。特に、コンテナやKubernetesのような新しい技術が絡んでくると、その傾向は顕著だ。
DevOpsの実践の一部として、あるいはパブリッククラウド基盤を使いたい、などの理由で、企業はステートレスおよびステートフルの本番アプリケーション用にコンテナの使用を増やしてきた。結果として、これらの活動によって、IT部門はさらなるプレッシャーを受けることになった。リソース・プロビジョニングの迅速化や、開発活動のペースに合わせて、開発者がセルフ・プロビジョニングのリソースを使えるようにしなければならなくなったからだ。コンテナ化アプリケーションの可搬性が向上したために、アプリケーション環境が、複数のデータセンターやクラウド環境に広がりやすくなった。この状況によって、業務とそれを運用するIT部門にとって課題となる以下のような副作用が生み出された。
IT部門が、リソース割当て作業を迅速化し、開発者に押し付けたために、割当てるリソースが本当にアプリケーションのニーズにあっているかを確認することがおろそかになる。それによって、企業はオーバープロビジョニングの過ちを犯しがちになり、経費が増大した。
コンテナ化環境の可搬性が向上したことによって、管理対象となるロケーションがさらに増え、内容を理解しなければならないパブリッククラウド環境も増え、連携すべき社内のチームも増えた。
ITが従量課金システムをベースに、複数のクラウド環境を横断してリソースを消費するので、これらのリソースのコストを追跡するのは、直に気が遠くなる程煩雑になる。例えば、ESGの調査では63%の企業が、可視性の欠如が自社のITの計画立案を阻害している、と回答した。
このため、企業がいかに運用を加速しようとしても、非効率につながる複雑さの増大とコストの上昇がその結果、ということが往々にして起こる。これらのコストは(常に管理することが大事だが)、急速に成長しているデジタル企業にとっては、相当重い負担になることがある。その結果は、こうだ。従量課金ベースのサービスに関連するコストの非効率によって、新たな取り組みへの予算が奪われ、最終的には変革を遅らせることになる。
これらの課題にどう取り組むか
雇用を増やす
コンテナのエキスパートは見つけるのが難しく、多くの場合、雇うのはさらに難しい。機会費用*訳注2についても検討する必要がある。社内の要員はできる限り、基盤の最適化ではなく、新たな変革による開発やビジネスの創造に専念すべきだ。この選択肢は避けたほうが良いだろう。
訳注2:ある選択をした時に、選ばれなかった他の選択肢によって得られたであろう最大利益のこと。
複雑な問題を外出しする
最新のコンテナを使って開発を行うのは、あなたにとっては初めてかも知れないが、誰にとってもそうだとは限らない。コンテナを使った経験を持つエキスパートを使おう。そのための面白い選択肢のひとつとしてあるのが、IBMグループの企業でマルチクラウドとDevOpsサービス市場のリーダーであるTaosだ。Taosは、同社のApplication Modernization Advisory Serviceを使って、貴社特有のニーズに合わせた技術的アドバイスを提供してくれる。Taosは、コンテナベースのワークロードの導入を増やす一方で、リスクを軽減し、コンテナ化環境用にアプリケーションのプラットフォーム変更を支援し、モノリシック・アプリケーション*訳注3のアーキテクチャーをマイクロサービス・アーキテクチャーへと変更してくれる。
訳注3:分割されていない1つのモジュールで構成されたアプリケーション。
スマートなAIベースのインサイトを使う
従来の処理を使って基盤を最適化する作業は、多くの場合、社内のごく限られた人達の知識に全面的に頼ることになりがちだ。ツールはアプリケーションの振る舞いについて優れたインサイトを提供してくれることが多いが、次に何をするべきかを考えるのは、データに基づいた作業ではなく、勘に頼ってしまうことが多い。これが、一部の企業がAIをこの作業に適用しようとしている理由だ。その一例、StormForgeは機械学習と統合性能テストを使ったクラウドベースの製品で、Kubernetesアプリケーション・デプロイメントの最適化についてアドバイスしてくれる。StormForgeには、基盤についての意思決定と複数の測定基準(パフォーマンス、可用性、時間、コスト、等)間のトレードオフを、企業が理解し可視化できるように、繰り返し実験を行う機能が付いている。これにより、企業は自社のビジネスニーズに対して最善の選択を行うことができる。
デジタルビジネスの時代における事業の成功は、IT運用とアプリケーション開発の高速化、基盤リソースの最適化、最新の技術革新に対してリソースを出来る限り集中すること、にかかっている。あまりにも多くの企業が、自社のコンテナ使用が増える際に、環境を適切に最適化していないことによって、貴重な予算を浪費している。そうでないところは、既存のツールで環境を最適化しようとして、あまりにも多くのリソースを浪費している。これを解決するには、サービスにせよ、優れたAIベースのツールにせよ、外部のインテリジェンスを使うことだ。
著者略歴:Scott Sinclair氏は、TechTargetの一部門Enterprise Strategy Group(ESG)のシニア・アナリスト。
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