Storage Magazine 2022年2月号より
Rich Castagna
『プロダクト・オブ・ザ・イヤー』20年の歩み
我々の『プロダクト・オブ・ザ・イヤー』は、ベンダーが過去に受賞した製品にあぐらをかくことを戒め、技術革新を促す力がある、という信念の下に運営されてきた。
データストレージ業界では過去20年の間に多くの出来事が起こったが、ストレージマガジンは、その都度注目すべきところを記事にしてきた。遡ること2002年、ストレージマガジン初の『プロダクト・オブ・ザ・イヤー』コンテストが開催されるのに伴い、ストレージ業界関係者による審査委員会が発足した。私は幸運にもこのPOY(今も昔もスタッフはProduct Of the Yearをこのように呼ぶ)と、約15年間にわたって歩みを共にすることができた。*訳注1
(訳注1:著者は編集長として、2002年から2017年までPOY選考に関わった。)
市場に出ているデータストレージ・ハードウェアとソフトウェアの中で最も優れたものに賞を与えるというのが、このコンテストの基本的な考え方だったが、そんじょそこらのエディターズ・ピック(編集者のオススメ)やユーザーズ・チョイスなどの選考とは趣(おもむき)が異なっていた。POYは、ストレージ製品の中のベスト・オブ・ザ・ベストを探し始めた時、別の道を採ったのだ。我々の審査委員会は、製品を最新のバージョンに基づいて判断する。実際、賞を検討する際の必須条件の一つは、その製品が前年にリリース、もしくはアップグレードされたもの、という点だった。20年経った今でも、「そのベンダーが最近何をしたのか」を重視する原則が我々の選考の基本になっている。
今年の受賞者を含め、ストレージマガジンは313個のプロダクト・オブ・ザ・イヤーの金、銀、銅賞を授与してきた。これらの受賞者は、ネットワークストレージの多様性と優越性の歴史を作ってきた者たちだ。
コンテストの誕生
20年前ストレージは、ネットワークの人気スターだったサーバーのパッとしない脇役のイメージから、やっと脱却し始めたところだった。ところが、共有ストレージがデータセンターに登場すると、ITマネージャー達はストレージに対して別の見方をした。エンタープライズ・コンピューティングの成功に不可欠のコンポーネントとして見たのだ。ITプロ達が、ネットワークストレージがデータセンターにおいて戦略的役割を担えることに気付き始めると、ストレージは急速に発展して広範且つ複雑な市場を形成し、以後進化と変革を続けてきた。
2002年の最初のストレージマガジン『プロダクト・オブ・ザ・イヤー』では、ベンダー14社の優れた製品が受賞した。受賞者は、老舗のベンダーあり、最新鋭のベンダーありで、以降これがPOYのスタイルになっていく。受賞製品は、当時のデータストレージ市場の状況とストレージ技術がいかに迅速に発展したかを反映している。振り返れば、初回のPOYは、受賞した13社が後に他のストレージベンダーまたはシステムベンダーに買収されたことと、Commvaultという2年前に最初の製品を発表したばかりの、ほぼ無名の新興企業がバックアップ&DRソフトウェア部門で金賞を獲ったことで、特別な回になった。この受賞はCommvault社が長く業界で活躍するきっかけになった。2002年の金賞以降、同社は7回受賞している。その7回の中には2019年の金賞受賞も含まれている。
コンテストのトレンドと変化
我々の毎年のコンテストは、ストレージ業界と製品の成長を映し出している。2005年のディスクおよびディスク・サブシステム部門受賞者を紹介する際、我々は金賞受賞者Xiotech社の Magnitude 3D 3000eの容量76.8TBを絶賛した。今日(こんにち)では、わずか4台の大容量ディスクドライブで扱える容量だ。そこからカレンダーを15年進めると、VastData社(2年前の2020年ディスクおよびディスク・サブシステム部門では金賞を受賞)が最大容量1.35PBを誇らしげに宣伝し、銀賞を受賞したDell EMCは、業界最大容量の2.8PBを持っていた。しかし、両者とも単一ラックで最大4.1PBの容量を持つ、Infinidat社(2020年の銅賞受賞者)のInfiniBox F6000と比べるとちっぽけに見える。
このコンテストには、7回表彰台に登ったCommvaultのような受賞の常連もいる。POY受賞者からは、ITストレージ進化の歴史が浮かんでくる。特に常連の受賞者は、彼ら自身の成長だけでなく、次第に技術水準が高度化していくストレージ市場の成熟度を示している。長年にわたりEMCは、「根っからの」ストレージベンダーであり、Data Domainなど他社の技術の買収者であり、そして最終的にはDell Technologiesに買収される側、という様々な役割を演じながら、11個のPYOメダルを受賞している。その一方で、毎年新興のベンダーも賞をさらっていく。これらの受賞は多くの場合、新興のベンダーが後にストレージ技術に功績を残す第一歩となった。POYは、(少し名前を挙げるだけでも)Asigra、Infinidat、Pure Storage、Veeamなどの新興ストレージスター達が、技術革新の活力を市場に注いで、その中で優位に立つことを予測した。
ストレージ市場がどれほど早く進化したのかピンとこないのであれば、直近の受賞者の内の11社が、我々が『プロダクト・オブ・ザ・イヤー』を始めた時には存在していなかったことを考えてもらいたい。ストレージが単なるITの必需品から戦略的計画における中心的存在へと成長するのに伴い、POYの部門も進化してきた。今ある2部門、クラウドストレージとHCIおよびコンポーザブル・インフラストラクチャーは、20年前は存在していなかった。2019年には、我々は当初2つの部門だった、「バックアップおよびDRのソフトウェア」と、「バックアップおよびDRのハードウェア」を一つにまとめ、「バックアップおよびDRのハードウェア、ソフトウェア、サービス」とした。更新された部門の名称は、データ保護のプロセスと製品の統合、およびデータ保護が、今日(こんにち)の巨大な容量と絶えず進化するサイバー攻撃の脅威にいかに対処しなければならないかを反映している。
私は十数年にわたってストレージマガジンの『プロダクト・オブ・ザ・イヤー』の企画に関わったことを誇りに思う。製品の多様性にはいつも目をみはる。その多様性は、プライマリ・ネットワークストレージから、どこにデータを置くべきかに対処するだけでなく、どのようにデータを保護、管理し、アクセス性を確保するかを行う拡張型エコシステムにまで広がっている。2022年のコンテストが待ち遠しい。
著者略歴:Rich Castagnaは、ハイテク・ジャーナリズムの世界に20年以上関わってきたベテラン・ライター。
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