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ドットの接続

第75回

夏休み終盤、改めて考える子どもの
ネットトラブルと学校・家庭の連携

夏休み期間中、児童生徒の多くはスマートフォンやパソコン、オンラインゲームを通じて友人と交流し、インターネットを活用する機会が大幅に増えます。今やオンラインでのつながりは子どもたちにとって日常であり、学習や趣味の場としても重要な存在となっています。しかしその一方で、顔を合わせないコミュニケーション特有の誤解やトラブルも生じやすく、時にはいじめや不適切な関係へと発展するケースも見られます。こうした問題は、家庭だけでなく学校においても対応を迫られる場面が増えており、教育現場にとっても大きな課題です。

 

特に小学校高学年から中学生にかけては、自我が芽生え、自らの価値観や立ち位置を模索する重要な時期です。この時期の子どもにとって、インターネットは世界を広げると同時に強い影響を及ぼす存在であり、適切な活用方法を学ぶことは避けて通れません。完全にネット利用を制限することは現実的ではなく、むしろ「トラブルをどう回避するか」、そして万が一起きてしまった際に「どう対処し被害を最小限にするか」を学ぶことが重要です。かつては学校生活や地域での対面のやり取りを通じて、友人との衝突や仲直りを経験し、社会性を育んできました。現代では、こうした学びをネット空間でも積ませることが求められています。

 

しかし、ネット社会には子ども同士の関係だけではない複雑さがあります。やり取りの相手が必ずしも同世代とは限らず、時には悪意を持つ大人が巧妙に関与してくることもあります。経験の浅い子どもを欺くことは容易であり、特に承認欲求が高まる年頃には、過激な言動や不適切な投稿によって注目を集めようとする傾向が見られます。実際、SNS上での炎上や写真・動画の不適切共有をきっかけとしたトラブルは年々増加しており、教育機関としても無視できない状況となっています。

 

こうした現状を踏まえると、学校におけるネットリテラシー教育の重要性はますます高まっています。現在は年に数回の座学や啓発資料の配布にとどまるケースも多く、子どもたちの現実的なネット利用実態には十分対応できていません。今後は、日常の授業や活動の中でネット利用を取り入れ、現実社会での学びと同様に、経験を通して判断力を育む教育が必要です。例えば、SNSでの情報発信の模擬体験や、実際に起きたトラブル事例をケーススタディとして扱うことで、より具体的なリスクを理解させることが可能です。

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同時に、学校だけで対応するのではなく、家庭との連携が欠かせません。保護者自身がインターネットの最新事情やリスクを理解し、子どもと日常的に対話できる環境を整えることが大切です。禁止ではなく「一緒に考える」姿勢を重視し、学校と家庭が同じ方向を向いて子どもをサポートすることで、より効果的な指導が実現します。

 

夏休みが終わっても、オンライン上の問題が自然に解決されるわけではありません。むしろ、休暇中に生じたトラブルを抱えたまま新学期を迎えるケースも少なくないのが実情です。教育機関としては、トラブルの兆候を早期に察知し、家庭と協力して適切に対応する体制づくりが不可欠です。インターネットが生活の基盤となった今、子どもたちが安全にデジタル社会を生き抜くための力を育むことは、学校教育の重要な役割の一つといえるでしょう。

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