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ドットの接続

第72回

なぜ芸能人のLINEは流出するのか 
~“私的領域”の脆さと社会のまなざし~

近年、芸能人の私的なLINEのやり取りがインターネット上に流出し、週刊誌報道やSNS上で炎上を引き起こすケースが後を絶ちません。そのたびに世間では驚きや憶測、時に陰謀論まで飛び交いますが、こうした流出の背景には、技術的な問題と人間関係に起因するリスクの双方が存在しています。

まず、LINEというサービス自体の出自に不安を感じる人も一定数います。LINEはもともと韓国のIT企業・ネイバーが開発母体であり、現在もネイバーは親会社の一部資本を保有しています。そのため、「ネイバーの社員が高額で個人情報を不正に取引しているのではないか」といった陰謀論もネット上では根強くささやかれています。もちろん、これに対する決定的な証拠は示されていないものの、企業の出自が疑念の引き金になるほどに、人々はLINEの“私的空間”に敏感になっているのです。

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次に、パスワード管理の甘さも見逃せません。芸能人に限らず、多くのユーザーは複雑なパスワードを設定せず、グループ内の信頼関係に依存しすぎる傾向があります。その結果、LINEグループの内部から不正にパスワードが漏洩し、第三者にアクセスされるケースがあるのです。意図的であれ偶発的であれ、仲間内の誰かによる“裏切り”によって、プライベートな情報が公の場へと流出することになります。

 

さらに、スマホの直接操作やスクリーンショットの撮影など、物理的な接触による情報漏洩も無視できません。例えば恋人やマネージャーなど、身近な人物がスマホを手に取る機会は珍しくありません。そうした環境下で、ちょっとした油断が決定的な流出事件を引き起こすのです。スマホという“鍵付きの私室”に、本人以外の手が簡単に届いてしまう現実がそこにあります。

 

そして、最後に見過ごしてはならないのが「グループの脆弱性」です。LINEグループは友達・知人で構成されているように見えて、必ずしも全員が信頼に足る人物とは限りません。「友達の友達は、必ずしも友達ではない」のです。芸能人であれば、撮影スタッフや業界関係者がグループに加わることもあります。こうした構成の緩さが、グループ内での情報が意図せず外部に伝わるリスクを高めています。

 

結局のところ、LINEがどれだけセキュアな設計を採っていても、その安全性を左右するのは“使う人間の意識”に他なりません。セキュリティは「設定」だけでなく「運用」にも依存するのです。私たちが日常的に使うメッセージアプリの“脆さ”を理解し、LINEという空間を安易に“安全圏”と捉えない視点が、今こそ必要とされています。

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