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JEITAテープストレージ専門委員会コラム

2024年04月

「環境影響課題」と「情報ライフサイクルマネジメント」

2000年代初頭に、米国に本社を持つストレージシステムベンダーが「情報ライフサイクルマネジメント(ILM = Information Lifecycle Management)」を提唱しました。情報は、生成、利用、保存、廃棄に至るまでの過程で成り立っており、これを情報のライフサイクルと呼びます。一般的に、情報が生まれた時に最も価値が高く、時間の経過とともに情報の利用頻度が減り、ほとんど利用されなくなった情報は、何かあったときのために保存しておくか、または廃棄されることになります。この情報のライフサイクルに着目し、適切なコストで情報の管理が必要であると、さまざまな場面で「情報ライフサイクルマネジメント」の重要性がうたわれるようになりました。 


2001年から2002年にかけて、米国大企業による不正会計や粉飾決算が明るみとなり、企業に財務情報の透明性と正確性の確保を厳しく求め、会計処理上の不正や誤謬を防ぐため、企業改革法としてSOX法(Sarbanes-Oxley Act)が制定されました。日本においても上場企業の粉飾決算等が問題となり、2007年に金融商品取引法の一部として日本版SOX法が施行されました。電子化された財務データを適切に管理する必要があることから、データの真正性・見読性・保存性にも注目され、改ざん防止機能やWORM(Write Once Read Many)などとも合わせて、SOX法に対応するストレージ関連技術も開発されました。 


筆者自身は35年以上、ストレージシステム製品の開発や販売支援に従事しておりますが、「アーカイブ」というキーワードがストレージ業界でも多く使用されるようになったのは、丁度この頃だったと思います。「バックアップ」と「アーカイブ」との違いは何か、それぞれの目的やメリットなどについて、ストレージセミナーなどでも多数の情報発信が行われていたことを記憶しております。「アーカイブ」用途として、長期間にわたりデータ保管が可能な記録媒体として光ディスクや磁気テープが再注目を集め、高速アクセス可能な(かつ、少々保管コストが高めな)磁気ディスクとを組み合わせた階層型ストレージ管理(HSM : Hierarchical Storage Management)の必要性を唱えるストレージベンダーもありました。階層型ストレージ管理は古くからある技術ですが、それまではペタバイト級の大容量のデータ保管が求められる一部の研究機関での採用が主たるものでした。頻繁に使用されるデータは高速アクセス可能な磁気ディスクに、あまり参照されなくなったデータは保存コストに優れた光ディスクや磁気テープで保管。情報の価値に基づく最適なデータ配置の考え方が、情報ライフサイクルマネジメントのポリシーに合致する部分があります。 


「アーカイブ」に最適なストレージを考察する場合、求められるデータ保存期間の長さ(例えば数十年、または半永久的)から、データを格納するストレージの新陳代謝も留意する必要があります。新陳代謝とは、古いものが新しいものに入れ替わり若返りをはかることです。記録する装置や記録媒体の寿命を超えてデータを長期に保存し続けるためには、世代をまたがる互換性や新しい世代の装置や記録媒体へのデータ移行(データマイグレーション)の容易性なども重要な要素となります。情報ライフサイクルマネジメントにおける「保存」過程が、最も期間が長く、かつデータ量が最も大きいものであり、データが持つ情報価値が存続する限り新陳代謝を忘れることはできません。 


オンプレミス中心であった時代には、企業が保有するデータ量の規模感(数テラバイト~数百テラバイト)での最適な配置場所の考察でしたが、クラウドストレージが台頭する昨今においては、世界中の企業や個人が保有するデジタルデータがデータセンターに集中し、環境影響課題への対策も世界規模での議論が必要になりました。主に、階層型ストレージ管理におけるデータ再配置ロジックは、人間による条件設定(アクセス頻度、データ容量、データ保存期間、などの監視)や判断で行われてきました。既に一部の研究・開発は進められているようですが、AIなどの技術によりエッジコンピューティング側で情報が生成された直後から最適なデータの配置先を推測、それぞれのストレージ特性とワークロードを見極め、早め早めに(従来の人間による判断を、遙かに超えるスピードで)適切なストレージがデータ格納先として選択されることにより、環境影響課題の一部が解決されることを期待したいと思います。 


環境影響課題の一つである地球温暖化防止に向けた、グリーンIT/グリーンストレージを実現する上で重要な役割を担うテープストレージについて、JEITA情報システム標準化委員会・テープストレージ専門委員会が情報を発信しております。ご興味のある方は、是非下記サイトをアクセスいただけると幸いです。 



 

一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) テープストレージ専門委員会


https://home.jeita.or.jp/standardization/committee/tape_storage.html


本内容にてご質問などございましたら、JDSF事務局経由でお願いいたします。

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