クラウド(雲)海の航行は慎重に

 

クラウドサービスは経済的で使い勝手が良い(コツを知ってさえいればだが)

Storage Magazine 2017年11月号より
Rich Castagna

 

「霧がやってくる 小さな猫の足で」詩人カール・サンドバーグは1916年にこう書いた。しかしこの時から百年後、霧と同じく大気の乱れである「クラウド(雲)」が、霧とは似ても似つかぬ荒々しい奔馬の蹄音を響かせてデータセンターに進入してきた。クラウドベースのデータストレージ、クラウドコンピューティング、さらには〜aaSで終わる無数のサービスは存在感を増し、オンプレミスの基盤に暗い影を落とすまでになった。

今日、クラウドに関する誇大な宣伝はやや収まってきた。また、多くのサービスがその実用性を証明した。しかし、中には派手に失敗した不幸な事例もあった。別な言い方をすれば、勝者と敗者がはっきりし、クラウドストレージとクラウドサービスの市場はかなりまともに見えるようになってきた。

クラウド恐怖症を患っているITプロたちを安心させるために、多くの専門家がクラウドの考え方は以下のように極めて単純なものだ、と言っている。「クラウドとは、別のデータセンターやリモートサイトのような、データを置きアプリを走らせる単なる別の場所に過ぎない。」この言葉で、何人かの心配性のデータセンター管理者は少し落ち着くかも知れないが、本当のところ、クラウドはそれほどとっつきやすいものではないし、クラウドサービスにより従来のITの役割や職責が変化しそうだ。

もう、みんなそのことには気づいていると思う。しかし、興味深いのはクラウドコンピューティング時代におけるこれだけ大規模なデータセンターの再編成に対してさえ、ITの多くの懸念事項は依然として変わっていない、ということだ。基盤リソース分配の変化に伴って新たなソリューションが必要になるかも知れない。とはいえ、基盤の土台を支える雑用はクラウド出現前の世界を彷彿とさせる。しかし、これは過去動いていたものが、今でもクラウドサービス環境で動くことを意味するわけではない。さらに事態をややこしくしているのは、事業部門がクラウドの動きに参画してきたことだ。ビュッフェスタイルのクラウドサービスに惹かれて、彼らはIT部門に依頼することを、クラウドを使う事によって結局自分でやらされているのだ。

 

オンプレミスでもクラウドでもストレージは厄介

データ管理会社のPrimary DataがVMworld 2017でアンケートを取った。36%の回答者がデータ移行を「頭痛の種」と言い、50%が自社のデータの少なくとも6割はコールド(最近触れられていない、使わない、ただ場所を食っている、という意味)だと語った。

Primary Dataの販売活動からすると、彼らはこれらの数字のいくつかに注目し商機を感じたのではないだろうか。とはいえ、このアンケート結果を詳細に見て私が思ったのは、「だから何?」これらの課題は、すべてストレージのプロが常に解決を迫られてきた、ストレージの古典的問題だ。しかし、これまでと異なるのは、現在ではクラウドがストレージの全体像の一部(一部の企業にとっては大きな部分)を占めている点であり、データ移行やコールドデータなどの由緒ある課題を従来の手法を用いて扱うのは賢明ではないだろう。「変わったように見えるものほど、中身は一緒」という格言があるが、クラウドの場合は「同じように見えるものほど、実際は違っている」と捉えるべきだろう。

クラウドは、あらゆるデータセンターのジレンマに対するソリューション、またはその一部と考えられるべきだ。これは特にストレージに関して言える。ストレージは最も成熟したクラウドサービスであり、通常データセンターで最もコストがかかり、場所を喰う代物だ。そうすると、このPrimary Data のアンケートで35%の回答者が、予算取りが難しいと感じ、27%がクラウドの採用に懸念を抱いているのも納得がいく。

 

クラウド・スマートの実態

Rackspace による別のアンケートも、議論の余地はあるかもしれないが、Primary Data や他のベンダーによるアンケートと同様、自社に都合のよい内容になっている。とはいえ、中には今回のアンケートで明らかになった数字もある。ストレージのプロであれば、クラウドベースのデータストレージは気易く出掛けて買えるようなものではないことを知っている。そこには、あなたがデータセンターで開梱しインストールするストレージと同じように色々な特徴や種類があるからだ。あなたが普段行っているように、アプリを動かすためにどれがベストのストレージかを決めるため、オンプレミスのストレージにかけるのと同様の調査を行わなければならない。とはいえ、ストレージがクラウドの中にあると、この作業は一層困難になる。データ移行方法、ネットワーク帯域、レイテンシ、入退課金、コールドデータのコスト、等々を検討しなければならない。ストレージ以外のIT担当者にとって、クラウドの課題はこれとは異なるかもしれないが、流れが複雑になるという点では一致している。

Rackspace のアンケートでは、44%の回答者が、予想したよりも多くの時間をクラウドサービスの保守に費やした、と答えた。Tech Target が独自に行った調査では、70%以上の回答者がクラウドベースのデータストレージサービスを検討する上でコストが最も重要であると言っていることからすると、ちょっと残念な結果だ。コストの節約を目指しながら何かをすることで、より多くの時間を費やすのでは、やっていることがちぐはぐだ。Rackspace のアンケートの中で最も参考になる結果は、62%の回答者が自分の専門知識を磨くために、クラウドのスキルを向上する機会が欲しい、と言っていることだ。

 

現実とのギャップに留意せよ

私は、クラウドベースのデータストレージやその他のクラウドサービスを避けるべきだと言っているわけではない。そうではなく、クラウドには慎重に取り組むべきだと思っている。あなたが解決しようとしている問題は相変わらずのものであるかも知れないが、クラウドでそれを解決する方法は従来とは違うかもしれない、ということを理解すべきだろう。

 

著者略歴:Rich CastagnaはTechTarget編集部門バイスプレジデント

 

 

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