Storage Magazine翻訳記事

新しいテープ技術

著者:Phil Goodwin
Storage Magazine 2012年2月号より


テープ技術とアプリケーションの新たな技術革新は、この尊敬すべき且つ今でも極めて有用なストレージメディアに新しい生命を吹き込んだ。

 

あなたは、テープは過去のもの、と思っているかも知れない。確かに、いくつかのディスク・ベンダーは、そうであって欲しいと願っていることだろう。しかし、実のところテープは、容量や速度など最も基本的な仕様における着実な進歩に加え、テープを新しいアプリケーションの分野に進出させるような新技術が登場し、近頃、大変元気が良いのだ。

 

磁気テープの基本的な使い方と価値提案は、過去50年を超える期間、それほど変わっていない。テープは、バックアップ&リカバリ(B/R)、遠隔地保管、これらの延長として、災害復旧(DR)の主要メディアとしての地位を保ってきた。これまでも何回か繰り返されてきた主張とは逆に、テープは長期間のデータ保存にとって現在でも最も安価な手段を提供している。低速のディスクでさえも、テープのストレージとしての低コストには太刀打ちできない。もちろん、データのアクセス時間に関しては、テープは最も低速のディスクにさえも敵わない。そのため、IT部門ではいまだに、両方を一つの環境の中で使う必要があるのだ。最近のテープ技術の革新により、ディスクとテープの併用がより簡単になり、今までより魅力的にさえなってきた。

 

 

ディスクと連動するテープの運命

 

ディスク・ベースのバックアップが、テープ市場に非常に大きな衝撃を与えたことについて異論はない。中小の企業にとって、ディスクにバックアップした後に遠隔のクラウドにバックアップ・データを転送する方法は、遠隔サイトのメディアとしてテープを使うのに比べ、ずっと簡単で費用効率も優れている。バックアップ・アプライアンスは、データの重複排除、圧縮をしてくれるため、複製されるデータのサイズは管理しやすい大きさにまで縮小される。多くの場合、復旧時間も同様に短縮される。

 

さらに、本社から離れたところにある支店、営業所などの遠隔オフィスでのバックアップにとって、テープ・スタッカー*訳注1や小さなロボット*訳注2は、長い間、頭痛の種だった。非IT要員にテープの交換や世代間のローテーションをやらせたために、データが復旧できない、ということが頻繁に起こった。遠隔オフィスからプロフェッショナルが管理するデータセンターにデータを自動的に転送できるようになって、多くの会社にとって遠隔地のテープは不要になった。

 

反対に、大企業ではテープは今でも盛んに使われている。大企業でも、B/R時間を高速にするためにディスク・ベースのバックアップが導入され、その使用は広がっているかもしれない。しかし、膨大なデータ量(数百TB、いやPBのデータを想像して頂きたい)をネットワーク経由で転送するのは、重複排除を用いたとしても、非現実的である。さらには、クラウド・ストレージの価格が、10セント/GBの低価格だとしても、データをテープに保存する時に掛かる3セント/GBに比べれば(テープを保管する費用は無視できるほど安い)、まだ何倍も高い。

 

 

テープ技術の改善

 

ディスクの面密度は、ムーアの法則に従って増え続けているが、テープも決して遅れを取っていない。Ultrium LTOテープフォーマットの現在の世代であるLTO-5は、1巻あたり3TBの容量(圧縮時)と280MB/秒のデータ転送速度(これも圧縮時)を誇る。テープメディアとしての信頼性は、1999年以来700倍になっている。

 

他のテープ技術(例:HP DDSやOracle CorpのStorageTek T10000など)がまだ生き残っているものの、LTOはオープンシステム環境における支配的なテープフォーマットである。今日までに、4百万台のLTOドライブが出荷され、1億巻のLTOテープが書き込まれた。多くの大企業では、何万巻ものテープを管理下に置いており、その量は限界に近づきつつある。そして、その量は現在でも増え続けている。LTOは2010年に2桁の売上増を記録している。

 

LTOのロードマップは、歴史的改善のカーブを描き続けている。LTO-6は2012年中のある時期にリリースが予定されており、8TBの容量(2.5:1の圧縮時)と525MB/秒の転送速度(圧縮時)の仕様がアナウンスされている。LTOのロードマップは現時点で、32TB の容量と1,180MB/秒の転送速度の仕様が予定されている、第8世代まで伸びている。

 

大企業にとって、自動化のための製品はテープ単体の技術と同じくらい重要である。ドライブは、自動化されたテープライブラリの外では滅多に使われない。そのため、自動化における進化は、堅牢なテープ製品同様、重要なのだ。多くの点で、テープの自動化はストレージ・アレイと同じ道をたどっている。つまりテープも、比較的一般商品化されたコンポーネントが、高機能な管理/アプリケーションのソフトウェアに囲まれているのだ。

 

 

 

 

 

「我々のライブラリの90%はソフトウェアだよね、って時々みんなで冗談を言うんだ」テープ・ライブラリ・メーカーSpectra Logic Corp.のマーケティングVP、Molly Rectorはこう語った。現在、ほとんどのライブラリがLTOドライブを使用していることを考えると、市場で戦うにはそこ以外の機能で差別化を図らなければならない。「ロボット機構の速度やアームの動きに関するマニアックなスペックなんて、ジョブ全体をどう遂行するかという構想の中では、些細な問題だよ。エラーの事前検知や、コンポーネントの自動フェールオーバー、管理者への未解決エラー通知、といった機能をライブラリが持っているか、という事の方が、はるかに重要だ。」Rectorはこう解説する。Spectra Logicのライブラリは、管理しているメディアの整合性を定期的にチェックする機能も持っている。

 

 

テープの制約を克服する

 

リカバリ時間目標(RTO)とリカバリ・ポイント目標(RPO)に対する要求が、かつて無いほど厳しくなっている状況の中で、テープが復旧の技術であり続けるためには、信頼性の向上が"必須"である。およそ50年の間、磁気テープの使い方が変わらなかった最大の理由は、テープの持つ制約がその間変わらなかったことだ。新しいテープ技術の素晴らしさを正しく評価するためには、これまでテープが持っていた制約を理解することが重要だ。

 

 

・メディア劣化

 

メディアの信頼性は劇的に向上してきたが、テープの運用が語られるとき、メディアはいまだに定期的なテストとリライトをすることが強く推奨されている。これは、何万巻ものメディアが保管されているときは、気が遠くなるほど大変な仕事だ。インデックス・ブロックなどの決定的に重要なデータブロックのエラーは、テープ全体を読めなくしてしまう。

 

 

・ドライブの互換性

 

LTOは過去の世代のリード互換性を保っているが、メディアのアーカイブ要求がドライブとメディアのサポート期間を越えてしまうこともあるかもしれない。また、時としてあるドライブで書いたテープが他のドライブで読めない事がある。このデータを何年も後に復旧するのは時間も費用もかかる可能性がある。

 

 

・相互運用性の欠如

 

LTOメディアは非LTOドライブでは読めない。その逆も同様。この事がデータ転送の阻害要因となってきた。

 

 

・独自テープフォーマット

 

tar と cpio が業界標準のテープフォーマットであるにもかかわらず、これらのフォーマットが純粋で交換可能な形で使われることは滅多にない。結果として、特に tar または cpio フォーマットでかかれていない限り、テープは書き込み時のB/Rアプリケーションでしか読めないようになっている。

 

 

・前世代との互換性

 

技術と製品の世代交代のために、多くのITユーザーは保管庫に様々なタイプのメディアを保存している。この様々な種類のメディア全てを読めるようにするには、レガシーのテープドライブだけでなく、レガシー、サーバー、OS、ドライバー、インターフェース、B/Rの各種バージョンを持ち続けなければならないことを意味する。7年前のテープを復旧する手順は良く言っても難しい作業であり、かつ可能だとしても高価で時間のかかる作業となる。リニアテープファイルシステム(LTFS:LINEAR TAPE FILE SYSTEM)あなたは「テープ」と「ワクワクする」という言葉をひとつの分の中で使うことは滅多にないだろう。しかし、もしこの二つの言葉をきちんと同時に使う機会があるとすれば、それはLTFSの出現だろう。元々IBMによって開発されLTOコンソーシアムに採用されたLTFSは、テープ上のファイルを直接ホストから読むことができる自己記述型ファイルシステムである。このファイルシステムのメタデータは、メディア、エレメント、テープのロケーション、テープ上のデータのロケーションを追跡するLTFS対応のアプリはライブラリがLTFS対応であれば、ライブラリにテープのロードを要求することができる。

LTFSは、ほぼ間違いなく、テープ・カートリッジやライブラリのロボット機構出現以来の、最もワクワクするテープの新技術である。LTFSおよび関連のデバイスドライバーは多くのベンダーからフリーでダウンロード可能だ。LTFSはファイルシステムであるだめ、ディレクトリ構造は直接よむことができる。ユーザーはもうテープを読むためにサーバ・パーティのソフトウェアに頼らなくても良くなる。ファイルがテープ上にあっても、標準のファイル操作が使えるのだ。例えば、HPはMAC OS X環境のスタンドアローンのテープドライブ用にStoreOpen Standalone を提供している。また、同環境用に提供されている StoreOpenAutomation は、テープライブラリとカートリッジをフォルダーの集まりとして表示している。メディアの移動はアプリケーションによって自動的に行われる。LTFSは主に非構造化データ(特に変更が起きる可能性のないファイル)を対象にしている。ディスク上のファイルは、たとえ隣接ブロックが利用できない状態でも、ポインターを使って簡単に修正ができるだろう。ところが、完全なレコードを読みだすために、テープのあるブロックから別なブロックへ飛ぶというのは、テープの現在の特性とは正反対の考えからだ。たとえ、一ファイルを複数のメディアに保存したとしても(実際は無理だが)一つのファイルを戻すために複数のテープをロードするのは、パフォーマンスを考えると受入れがたいだろう。

 

 

 

 

 

ファイルがホストからアクセス可能であるため、LTSF自身がニアラインの機能を提供する。LTFSの理想的な適用分野は医療画像と動画だ。特に医療画像は決して変更されることがない。これらの大きなファイルをテープに保存するのはコストの面から利点があるが、さらにこれらのファイルはユーザーが直接検索してアクセスすることができるのだ。テープからファイルを読みだすのはディスクに比べれば時間がかかるかもしれない、ファイルがオフラインで保存されている場合に比べれば短時間だ。

 

 

動き始めたLTFS

 

LTFSを中心とした市場は急速に成長しており、あと一歩で、その収益構造基盤を確立するところまできている。この市場基盤を現実化すべく動いている組織のひとつが Active Archive Alliance だ。このベンダー・コンソーシアムは、LTSFが複数のストレージメディアにまたがって配置されることを可能にする、オープンスタンダードの開発に取り組んでいる。この規格を一言で言えば、LTSFがディスク・サブシステムとテープ・サブシステムを横断して単一の論理ボリュームを作成できるようにするもの、ということになるだろう。

 

もちろん、ボリュームを異なるメディア/タイプ間に展開するだけでは十分ではない。データを最適なティアに配置し、ユーザーのポリシーまたは仕様履歴に基づいてテープを移動するアプリケーションが必要だ。Active Archive方法論を使ってストレージマネジメント・アプリケーションを作っている会社には、Atempo Inc., FileTek Inc., Grau Data AG, QStar Technologiesなどがある。

 

 

 

 

 

OracleもLTSFをベースとしたソリューションを提供している。「高さが(USBメモリー0と同じ)親指大で5TB、っていうのは、かなりクールなアイデアだと思うよ。」Oracleのテープ製品マネジメント・ディレクターのTom Wultichはいたずらっぽく語る。彼が言っているのは、LTFS対応で且つ5TBの容量を持つT10000Cテープドライブのことだ。「ユーザーはあるLTFSシステムから別なものへ、簡単に移行できるんだ。一つの例を上げると、編集の時、大きなメディア・ファイルをあるシステムから別なシステムへの移行かな。数テラバイトのファイルをネットワーク越しに転送するのは現実的じゃない。ユーザーは、その替わりに、ファイルをテープにdrag & dropして、他のユーザーに渡す。他のユーザーは、それを共有ドライブかUSBメモリーのようにマウントするだけでいいんだ。」Wultichはこう語る。

 

Crossroads System Inc.のStrongBoxは、LTFSを長期ストレージアーカイブとして利用することを考えて作られた、オールインワン製品だ。Crossroadsの社長兼CEO、Robert SimsはStrongBoxを、「テープ用NASヘッド」と呼ぶ。StrongBoxアプライアンスは、ディスクをフロントエンド・キャッシュとして使い、バックエンドでは複数ベンダーのテープを接続できる。同製品は、CIFSとNFSをサポートしている。

 

StrongBoxは、長期間のデータ復旧性を保証するのに必要な信頼性を提供できるように設計されている。Simsは、StrongBoxの特徴を「自己治癒能力」と形容する。これは、二つの異なるテープへのデュアル・コピーやテープのレプリケーション、一つ目のテープが読めないときは二番目のコピーにフェールオーバーする、といったStrongBoxの諸機能を指している。StrongBoxはメディアの劣化を検知するために、ドライブとメディア両方のエラー・レートを監視している。メディアのハードエラーが発生したとき、StrongBoxはそのメディアを入れ替えるために、テープコピーを実行する。

 

テープをオンラインのファイルアクセスに使ったときに生じる問題の一つが、データ読み込みの遅延である。CIFSとNFSでは通常、データがテープからマウントされてアクセスされ、読み込まれる前にタイムアウトを起こしてしまう。StrongBoxは、全ファイルがテープから戻るまでの遅延に対処するために512KBのバッファーをディスク上に保持している。StrongBoxは現在のところ、修正・削除に対応していないが、データ削除のサポートは2112年に予定されている。

 

LTFSは通常の使用においても、より低コストの使用方法を提供してくれるかも知れない。例えば、デュアル・ライトのシナリオのライト・ターゲットにテープを使う事は、継続的データ保護(CDP)にとっては有効だろう。さらに、二つの複製を異なる場所に持つことは、データの安全性と非常にきめ細かいRPOを保証することにもなる。LTFSがB/Rアプリケーションの必要性を無くす、ということは起こらないだろう。B/Rアプリケーションは、ある時点を指定した(ポイント・イン・タイム)リストアや全ファイルシステムの中の最新版を探すのに便利だからだ。とはいえ、ユーザーが自分で行う作業や特定のファイルバージョンを戻す機能においては、LTFSはもってこいのソリューションと言えるだろう。

 

 

テープよ安らかに眠れ?まだまだ!

 

過去50年間のなかで少なくとも4年前からテープの死が宣言されてきた。実際のところ、テープのアーカイブ・ソリューションとしての地位は、それほど脅かされなかったのだが、LTFSは長期間のデータ・アーカイブとアクセスのニーズに、新たな市場を切り開いた。Active Archiveによって、LTFSはデータセンターにおけるティア4の現実的な格納場所としての地位を獲得するだろう。シームレスなアクセスと低コストによって、テープの寿命は最低でもあと10年は伸びるに違いない。

 

訳注1:オートローダー
訳注2:テープの装填や、スロットへの運搬を自動的に行う装置。

 

 

著者略歴:Phil Goodwinはストレージのコンサルタント兼フリーのライター。

 

 

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