Storage Magazine翻訳記事

スケールアウト・システムを本当に必要としているのは誰か?

者:Terri McClure
Storage Magazine 2011年10月号より


一昔前までは、伝統的な紙ベースで業務を行ってきた会社は、今やデジタルデータの波に呑み込まれつつある。スケールアウトNASは、アプリケーションに高いパフォーマンスを提供してくれる。

 

あなたは、これまであなたの会社のIT部門に、スケールアウト・システムが必要となるなどとは考えていなかったかも知れない。スケールアウト・システムは当初、高速操作のために非常に大きな帯域幅を必要とするような、巨大なファイルを扱っている特定の業種で使われ始めた。しかし今日、スケールアウト・システムは様々な環境に対して広範囲の影響力を及ぼすようになってきている。

 

例えば、一昔前まで伝統的な紙またはマイクロフィルムをベースとした運用を行って来た、主要産業のいくつかの業種では、デジタルデータの保存量が紙やマイクロフィルムの量を上回ってきたことに気付き始めている。これらの業種は、スケールアウトNASベンダーにとって、高いパフォーマンスでアプリケーションをサポートできる、魅力的な垂直方向の市場だ。

 

 

スループットを表すX軸とI/OのY軸上に展開された、上図の「スケールアウトNASの垂直的親和性」を見ると、これらの業種は非常に高いスループットを必要とするアプリケーションをもっており、秒あたりのMB容量において従来のスケールアップNASを上回る、パラレルデータサービス機能を持ったスケールアップNAS(および来年出てくるpNFS)こそがこれらのアプリケーションの要求に応えることができる。

 

5年くらい前であれば、この図の内容は大分違っていただろう。この図で右上にある業種の多くは、右下でひしめき合っていたはずだ。しかし、CPU技術の進歩(マルチコアやより高速なチップセット)、それに加えてビデオ、グラフィックス、設計ソフト(ほんの少し例をあげるだけでも、3次元CAD、4次元医療画像、高解像度TV)などによって、これまでと非常に異なるパフォーマンス特性を求める、業種特有のアプリケーションが新たに生み出された。これらのアプリケーションは、シングルまたはデュアルのプロセッサー内蔵のスケールアップシステムでは、とても処理が追いつかず、本番システムのスピード低下や要求に対するタイムアウトの原因となるほどの、巨大ファイルとマルチスレッド要求を生成する。

 

今、私が述べた部分を解説するために、いくつかの業種アプリケーションを詳しく見ていこう。

 

 

金融サービス

 

非常に大量のトランザクション・データを使いこなしてきたこの業種のユーザーは、今や、マーケット・パフォーマンス予測やビジネス・インテリジェンス のような困難な作業に取り組むために、ハイ・パフォーマンスの並列ファイルシステムにも精通している。これらの作業には、単に大きい、というだけでなく、長い時間稼働し、計算負荷が高く、高度なデータ保護と即時のデータ可用性が要求されるファイルが使われる。金融サービスのユーザーが特に探し求めているのは、データ・インテグレーションのボトルネックを無くするスケールアウト・アーキテクチャーだ。データ・インテグレーションは、金融サービスITのコアとなるタスクである。金融サービスのユーザーにとって、理想的なNASソリューションは、ノードが増えた分だけパフォーマンスも向上するシステムである。

 

 

生命科学

 

驚くまでもないことだが、健康関連の新薬開発に携わっている会社は、大きな帯域幅と巨大な拡張性を提供する並列ファイルシステムに、積極的な関心を示している。これらの会社では、通常、緊密な連携を必要とする共同作業が明確に存在している。例えば、ITチームが、何千人もの研究者の間で、非常に大きな遺伝子配列ファイルやプロテオーム*訳注1のデータを共有する方法を探しているとする。プロジェクトを成功させるためには、会社は新薬発見までのプロセスを加速しなければならない。新薬を速く開発すればするほど、少しでも早く新薬を試験し、実世界の医療・科学の分野で利用のための実証を行うことが出来るようになる。このような会社が、ITに重点を置きながら、新薬発見のプロセスを早める方法こそ、アップグレードのためのシステム総入れ替えを全く必要としない、ハイ・パフォーマンスの並列ファイルシステム基盤である。

 

 

製造と設計

 

ハイテク製造業、航空宇宙会社、ナノ電子の新興企業、CAD/CAM設計会社、その他多くの企業が、凄まじい量のストレージを必要としている。そしてこれら全ての企業が、データ管理を最適化する方法を探し求めている。この業種のユーザーは、デジタルデータの増加に対応し、エンジニアリング・チーム間でのデータ共有を改善するような完璧な容量拡張機能を必要としている。製造・設計の現場でのシステムダウンは、経済的損害に直結するため、ユーザーは、ほぼ100%に近い信頼性を持ち、稼働中でも簡単に容量の追加ができるファイル・ベースのストレージを導入する方向に向かう。彼らの探し求めているのは、ファイルシステムの管理、データ移動、レプリケーション、マイグレーション/ティアリングを自動で支援してくれるシステムだ。

 

 

メディア/エンターテイメント

 

メディア/エンターテイメント企業における運用形態は劇的な進化を遂げてきた。数年前までおそらく紙媒体の雑誌として印刷されていたものが、今では「オンライン・フォーマットのみ」での入手に変わっている。読者と記事制作者にとって、速やかに入手できなければいけないのは記事だけではない。広告ファイルも同様である。サイズの大きいビデオ・ファイルも、デジタル化が進むメディア/エンターテイメント企業におけるデータ増大問題をより深刻にする要因となっている。

 

今日のメディア/エンターテイメント企業はテラバイト、ペタバイト単位のファイル・データを生みだし保管している。いくつかの企業では、データのほとんどは、本社のデータセンターから切り離されて、離れたところにある報道局やCGIデザインスタジオなどの「エッジ」と言われるところで作られている。この運用の構造は、バックアップによるデータ保護に問題をもたらすだけでなく、災害復旧(DR)基盤の機能さえ阻害しかねない。メディア/エンターテイメント企業は、様々な問題を解決するソリューションとして、ハイ・パフォーマンスのスケールアウトNASを見ている。例として、仮想化サーバー基盤のパフォーマンスを改善する事や、コンテンツ制作者とコンシューマーに、即時かつ常時、データを確保する事、などが期待されている。

 

 

石油・ガス

 

石油やガスの埋蔵地を見つけるのは、昔は当てっこゲームだった。今日、この作業はデジタルデータを頼りに行う、正確で科学的な企てになっている。埋蔵地が減少し、採掘作業が複雑になるにつれて、埋蔵の可能性のある場所を3次元で視覚化するシステムは、この業界にとって必携のツールとなった。石油・ガスの垂直市場で働くITマネージャーには、石油埋蔵地のモデリング/シミュレーション作業から生まれる、膨大なデータの共有と保護をサポートできるNAS基盤をいかにして見つけるか、という課題が課せられる。データストレージ容量が増大しても、パフォーマンスを維持できるアーキテクチャーがなければ、競争力を維持するのは難しくなる。「結果を出すまでの時間(time-to-result)」 (リソースの抽出)が長引いてしまうからだ。スケールアウトNASは、膨大な計算機によるシミュレーションを行う石油・ガスの会社にとって、優れたソリューションであり、非常に直接的な形で、競争を勝ち抜いて成功へと導く鍵を握っている。

 

 

定番市場: ハイ・パフォーマンス・コンピューティング/学術研究

 

宇宙物理学、分子生物学、化学、原子物理学、さらには公的機関で働く社会科学者までもが、大量なデータの生成者であり消費者でもある。例えば、CERNが運転する大型ハドロン衝突型加速器のITを担当するチームは、2010年半ばには70PBのストレージを運用していた。これよりずっと小さな研究施設(通常、予算に制約された大学の研究室や企業のラボ)でも、実世界の問題や宇宙の壮大な疑問に答えるべく行われるモデリングとシミュレーションをサポートするために頼りにしているのは、ハイ・パフォーマンス・グリッド・コンピューティングと並列ファイルシステムのアーキテクチャーである。彼らの研究には、極めて高いパフォーマンスと帯域幅要求を満たす、低遅延のネットワーク・クラスターが必要とされる。

 

これらの業種は、スループットの面でスケールアウトNASの持つパフォーマンス能力を絶対的に必要としたために、スケールアウトNASの実際の初期導入者となった。とはいえ、大多数のユーザーは、シングルネームスペース の中で何ペタバイトものデータが保存できることによる、効率性と運用コストの節約に着目すべきだろう。これこそが、スケールアウトNASがクラウド基盤に安定した市場を見いだしている理由なのだ。この機能によって、コモディティのハードウェア上で稼働し、ブロック、ファイル、オブジェクト、三種類のデータをサポートするスケールアウトNASシステム を提供するGluster(最近Red Hatに買収された)のような会社が、クラウドをベースとしたビジネスやプライベート・クラウドを構築する企業から大きな利益を得る、という事態も起こってくる。Enterprise Strategy Groupでは、2015年までに、外付けNAS製品の売り上げの80%がスケールアウトNASによって占められ、「巨大なファイル・データ」とクラウドがその成長のコアになるだろうと予測している。

 

 

訳注1:ある生物学的な系において存在しているタンパク質の総体。(Wikipediaより)

 

著者略歴:Terri McClureは、マサチューセッツ州ミルフォードのEnterprise Strategy Group社シニア・ストレージ・アナリスト。

 

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