Storage Magazine翻訳記事

主流になる半導体ストレージ

著者:Rich Castagna
Storage Magazine 2011年10月号より


一つの技術が、それによって生みだされる製品や派生技術によって判断されるものであるとすれば、SSDが一定の成熟度に達していない、などと論ずることは、もはや不可能に近い。

 

ジーン・シェパード*訳注1の"A Christmas Story"の中に、名場面がある。ラルフと仲間の悪ガキが、濡れた舌は冷たい金属にくっつく、という格言を反証させるためにフリックに金属の旗ポールをなめさせるシーンだ*訳注2。もちろん、これは本当のことだということが判明し、フリックは旗ポールにくっついてしまい、消防隊が現場に駆けつけるという騒ぎになる。

 

何かを最初にやるということ、つまり、他人の挑発に乗って第一歩を踏み出すということは、かなり恐ろしいことだ。だって、どんな結果になるか予測不能なのだ。しかし、ITの世界には、もちろん選択肢というものがある。物事を安全に進め、有名大手ベンダーから「昔ながらの」技術を買い続けるか、生まれての、あるいは目新しい技術を一か八かで試すか、だ。

 

半導体ストレージは、さきほどの凍った旗ポールのようなもので、沢山の人たちが注目し、話題にしているが、ジャンプする覚悟を持った人はそれほど多くない。これは新しい物だ、ということでストレージのユーザーは新しい技術を受け入れる準備にたっぷり時間を掛ける。半導体ストレージのスピードや控えめな電力消費には興味をそそられるものの、これまでの物とはまったく違う物だ。しかも、この技術を取り巻く経済学が、どうも我々にはなじみが薄い。何が言いたいか、というと、要するに半導体ストレージが、我々がデータを保存する他の何よりも馬鹿高い、ということだ。

 

製品の売り上げや収益など、従来の測定方法を使って、半導体ストレージの市場を見てみると。半導体ストレージはエンタープライズ・ストレージ全体の中で、ほとんど測定器の針が動いていないに等しい状態、と言わざるを得ない。しかし、よくよく検討しなければならない他の兆候もある。ある製品が成熟しているかどうか、少なくとも市場シェアの重要な一角を握っているかどうかは、その製品が作ってきたコンテクストやその技術を中心として関連製品の生態系が形作られようとしているかどうか、で判断できる。

 

これは、携帯電話産業に群がるアフターマーケット(付属部品市場)によく似ている。何十ものベンダーが、保護ケース、着信音、待受画面、ホルダー、ストラップ、などなどをアフターマーケットで売っている。コアの技術がそれに付随する全ての物を引き寄せるだけのインパクトを持っている時、新しい市場が生まれるのは間違いない。

 

今、半導体ストレージに起こっているのはまさにこれだ。それほど遠くない昔、半導体ストレージの話というのは、コンシューマーの技術をエンタープライズの要件に変造しようとしているほんの一握りのベンダーたちについての事だった。今日、私に届くプレスリリースから推定すると、クールな新製品を持ったストレージ企業がおよそ80億社ある。(ちょっと誇張している。多分40億しかないかもしれない。)しかし、新製品の急増と形が出来てきつつある半導体ストレージの生態系によって、人々の関心は変わった。気がつけば我々はいつの間にか、製品の仕様や内部の機能にこだわらくなっている。

 

これから言うことをよーく聞いてもらいたい。検討している製品が自社の環境においてパフォーマンスにどんな影響を与えるかを、基本スペックを通して理解しようとするのは結構だ。しかし、あなたは全ての、マニアックなまでの詳細が必要なのだろうか?ハードディスクに関して言えば、容量、インターフェース、回転速度が分かれば十分だ。あなたは、垂直磁気記録技術がどのように動いているか本当に知る必要があるだろうか?とにかく、動くのだ。それによって、面密度はベラボーに上がるということ、そういうことだ。半導体ストレージも同じ事だ。

 

半導体ストレージが一人前になったという私の主張を裏付ける証拠は沢山ある。ひとまず、製品そのものを見て欲しい。我々は、それらを半導体ディスクと呼ぶが、ハードディスクの差し替え(単なる一時しのぎ)の域をはるかに超えている。導入の選択肢は豊富にあり、ハードディスクのそれを凌駕する。半導体は、サーバーやストレージ・アレイの中に内蔵されるストレージとしても使う事ができるし、キャッシュとして様々な構成の中でパフォーマンスのスーパー・ブースターとして使う事もできる。

 

半導体ストレージの生態系は多様になりつつあるだけではない。アプリケーションも素晴らしい進化を遂げつつある。最近、私はアプリケーション環境において半導体ストレージを高速化するあるソフトウェア製品のブリーフィングを聞いた。フラッシュ・メモリーをさらに凄い物(flashier)にしようというアプリだ。多くのハードウェア・ベンダーが自社の半導体ストレージ・システムをクラウド・ストレージ・サービス・プロダイダーの方角へねじ込もうとしている。15年前、クラウド・ストレージ・サービスが、ストレージ基盤を維持する費用が高すぎて、現実的な料金体系を作れず大部分が失敗したことを思えば、これは大変なことだ。今日、これに対する答えは、替わりにどうぞ地球上で一番高いストレージを試してみて下さい、だ。 もう、完全に世界が違うのだ。

 

半導体ストレージ用のアプリケーションは、今どんどん出てきている。初期段階の今でさえ、仮想デスクトップを導入するのに、ブートストーム対策として半導体ストレージを使わないという話はまず聞かない。もはや、半導体ストレージは、単なる基盤型のソリューションではない。システム管理者にとって、パフォーマンスの劇的な向上が期待できる半導体ストレージは垂涎の的だ。

 

 

著者略歴:Rich CastagnaはStorage Media Groupの編集ディレクター。

 

訳注1:Jean Parker Shepherd(1921〜1999)は、ストーリーテラー、ラジオ/テレビのパーソナリティ、作家、俳優。シカゴ生まれ、インディアナ州ハモンド育ち。

 

訳注2:A Christmas Storyは、1930年代インディアナ州のある町に住む小学3年生ラルフを中心に展開する、ジーン・シェパードの半自伝的コメディ。校庭の一角にある金属の国旗掲揚ポールの下にラルフ達クラスの少年らが集まってもめている。「(お前の爺さんが言ってる)『濡れた舌で凍った金属にさわると、舌がくっつく』、なんて嘘だ。」と主張するフリックが、ラルフたち同級生の悪ガキに「嘘だと思うんなら、お前が自分でやってみせろよ、あーん?」と挑発され、プライド上後に引けなくなり(本当は怖いのだが)、意を決して実行に及ぶ。インディアナ州の12月の平均気温は-4℃。(1930年当時はもっと寒かったかも知れない)。濡れた皮膚はたちまち金属の表面に凍り付く。ラルフの教室の担任の先生がそれを見つけて、消防車は来るわ警察は来るわの大騒ぎになる、というエピソード。

 

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