Storage Magazine翻訳記事

クラウドについてまじめに考えて見よう

著者:Rich Castagna
Storage Magazine 2011年9月号より


クラウド・ストレージというのは、本当はかなりシンプルな概念なのに、何でまたこんなに複雑になってしまったんだ?

 

今週、同僚の編集者と私は、「クラウド・ウォッシング 」*訳注1という用語の定義を考えるために、まともな人たちには想像も付かないほど多くの時間を費やした。「でたらめ」や「たわごと」といった露骨な(でも、多分事実を言い当てている)言葉をなんとか避けながら、最後にようやく関係者の顔をつぶさない、という目的にかなう定義にたどり着いた。しかし、私はその過程で貴重な教訓を得た。このクラウドという代物は、つかみ所がなく、グニャグニャ、グチャグチャしたもので、こいつの本性を見極めるのは生やさしいことではないという事だ。

 

ベンダーが、市場を眩惑させるために「クラウド」という言葉の意味をねじ曲げる。ユーザーが「クラウド」という言葉が製品名に付いているのを見て、古い製品を新しいと勘違いしてしまう。ベンダーが、あわよくばそういうことが起こって欲しいと期待している状況。こういう状況を定義するのは、非常に難しい。同様に、クラウドとは本当は何か、を定義するのもとても難しいことだ。目下のところ、この言葉の定義は、かなり混乱している。もうひとつ私が学んだことがある。クラウド・ウォッシングをしているベンダーがやっているのは、実はクラウド・ウィッシング(クラウド願望)だ。彼らは、本当に販売できるクラウド製品があればいいな、と願望しているのだ。

 

このテーマについての二つの陣営の誇張した表現、これがまた何の役にも立たない。「ハレルヤ!クラウド・ストレージは我々の祈りになんでも答えてくれる!」という一味vs. 「えー、おほん、クラウド・ストレージが私のデータセンターの問題を全て解決しないのだとしたら、いったいクラウド・ストレージなんかどこが良いんだ?」という連中。

 

私が最近読んだ、よその出版社がやっているWebサイトのブログの投稿は、「バックアップはクラウドに取って代わられるだろうから、バックアップはもう終わった。」と力説していた。本当にそうだろうか?興味深いことに、そのブロガーは、クラウドからのデータ復旧については決して立ち入った話をしていない。まあ、この問題は いずれ解決されると思う。もちろんすぐにではない、そのうち、だが。このブロガーが最後に提案しているのは、クラウド・ストレージを使いたかったら、サーバーからストレージから、あらゆるものを仮想化しろ、というものだった。私は、何故ストレージ仮想化のようなおどろおどろしい代物で、クラウドの明るい希望訳注*2を消すようなことを言う人々がいるのか理解できない。クラウド・ストレージのルールブックの中で、社内ストレージの仮想化にはクラウドが必要である、と述べているページなど未だかつて見たことがない。

 

これとは対極的な立場の、MeriTalkという公務員の自称「コミュニティ・ネットワーク」という団体が出したいくつかのプレスリリースを入手した。この団体は彼らが行ったいくつかの調査結果を送って来た。その中に、「統合における困難な課題についての調査報告」というものもあった。このレポートは、連邦のデータセンターを統合することによって支出削減を図っているオバマ政権の努力を、ぶち壊しにしているように見える。中には、連邦政府のITプロフェッショナルにアンケートを採ったところ、統合の目的が達成可能だと考えているのはわずかに10%、そして25%の回答者が、データセンターは数年以内に現在よりも増えるだろう、と予測している、などといった数字が楽しげに書かれている。そして、クラウドのことに話が及ぶと彼らの論調は楽観的とは言い難いものになってくる。62%の回答者が、自分たちの運用委託先の会社 がマネージド・サービスを使いこなせるとは思えない、と言っている。とはいえ、私の気に入った箇所がある。そこにはこう書かれている。「容量を追加することは、パチンとスイッチを入れるのとは比べものにならないほど難しい。」

 

もちろん、「クラウドは素晴らしい」派は、この「比べものにならないほど難しい」という文言を「同じくらい簡単だ」と置き換えるのだろう。

 

真実はこの中間のどこかにある。とはいえ、クラウド・ストレージについての賛成・反対両派の議論は、最近では問題を混乱させているだけで噛み合っていない。クラウド・ストレージのオプションを検討するとき、検討することは多いが選択肢は少ない。しかし、それほど複雑でもない。もし、ベンダーが馬鹿げたクラウド・ウォッシングを止めてくれたら、状況はもっとすっきりするだろう。

 

非常に簡単に言うと、クラウド・ストレージ・サービスとは、オンサイトにストレージを構築する代わりになるものをオフサイトで提供しているものだ。一つのサービスあるいは製品を評価するには、コスト、パフォーマンス、機能、保守、などについて丹念に比べていくしかない。これらの下調べを全て済ませ、さらなる基盤の購入とそのサポートが最良の選択である、と決定したのであれば、結構なことだ。クラウド・サービスが一番上に来て、Capex(Capital Expenditure:資本支出)*訳注3からOpex(Operating Expense:運用コスト) に移行するのであれば、それもまた良し。話は、これほどまでに単純明快になるのだ。

 

クラウドと聞くと、なにか危なっかしい感じがするのではないだろうか?おそらくあなたは、会社のデータをクラウドに送ったら、想定外の事が起きて首、履歴書を書き直して職探し、みたいなことを想像しているのではないだろうか。しかし、代わりにシステム一式 を購入したとしても、その新品がお釈迦になってしまえば、これまた自分の首をつなぎ止める事はおぼつかない。

 

もっとよく考える必要があるなら、Sogeti世界品質レポート(Sogeti World Quality Report)*訳注4という題名のアンケートの一節を検討してもらいたい。「中国などの新興経済国は、クラウド基盤を真っ先に導入している」つまり、中国とそのお仲間の新興国は、巡り巡ってあなたの会社のデータセンターに納まるストレージをしこたま作っているが、彼ら自身はその製品を買わずに、クラウドの方に行っている。おそらく、ここに何か学べる事があるはずだ。

 

 

訳注1:英文cloud washing。ベンダーが、既存製品をクラウドに絡めて再ブランド化をすること。この場合のウォッシングウォッシングは、「水彩絵の具や水墨の薄い一塗り」の意味で、クラウド風の味付けをする事。グリーンITの流行に乗せて、自社製品の再ブランド化をはかる「グリーン・ウォッシング」という言葉もある 。ローンダリングのような洗濯の意味ではない。(ちなみに、ローンダリングは、偽装・隠蔽という犯罪を示唆する意味があるので、「クラウド・ローンダリング」と言い間違えないように注意が必要。)
参考URL:http://searchcloudstorage.techtarget.com/definition/cloud-washing

 

訳注2:Every cloud has a silver lining. 雲にも明るいへりはある、どんなに黒い雲でもその裏側は太陽に照らされて銀色に輝いている、そこから派生して、どんな悪いことにも良い面がある、ということわざと、クラウドを掛けている。

 

訳注3:設備の価値を、維持または向上させるための設備投資に関する資本的支出。耐久年数により減価償却される資本的支出を意味する。
参考URL:http://m-words.jp/w/CAPEX.html

 

訳注4:Sogetiは大手ITコンサルティング・サービス企業。フランスITサービス企業キャップジェミニの100%子会社。このレポートは世界のQA市場について語っている。
参考URL:http://www.sogeti.com/Curious-about-Sogeti/publications/World-Quality-Report-2011-2012/

 


著者略歴:Rich CastagnaはStorage Media Groupの編集ディレクター。

 

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